【特別企画】
『ドラッカー理論で成功する「ひとり起業」の強化書』
著者・監修者対談

【第1回】ドラッカーは起業家をどのように捉えていたのか?

第2回
監修者・藤屋伸二「ひとり起業物語」

今回のテーマは監修者・藤屋伸二先生のひとり起業物語。どのようにしてドラッカーの専門家になったのか、そのきっかけと背景に迫ります

■いくつもの肩書きを名乗り、やがて不要になった

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天田
ところで、藤屋先生の「ひとり起業体験」についてお伺いしたいのですが、そもそも起業されたのはおいくつのときだったのですか?
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藤屋
40歳でした。もう24年くらいになります。そういう質問も来るだろうと予想していたので、過去の名刺を引っ張り出してきました(笑)
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天田
過去の名刺ですか!
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藤屋
私の肩書きがどう変遷したのかを中心にお伝えしましょう。一番最初の事務所名は「藤屋伸二事務所」でした。肩書きは「マネジメントアドバイザー」です。「これじゃわかりにくい」ということで、次は「経営コンサルタント」を名乗りました。
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天田
そんな時期があったんですね。
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藤屋
キャッチフレーズは「経営のモヤモヤを解消します」でした。その次は、中小企業診断士の資格を生かして「藤屋経営研究所」になりました。社会保険労務士の資格も持っていましたので、本来得意としていた「組織活性化コンサルタント」と名乗った時期もありましたね。
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天田
いろいろ変遷していたんですね。
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藤屋
次に、短期間ではありますが「ドラッカー経営コンサルタント」を名乗ったこともあります。裏面には「ドラッカー経営に基づく経営力強化をご提案します」とありますね。

それから、何を血迷ったのか(笑)「いい会社にしようコンサルタント」になり、「差別化戦略コンサルタント」になりました。
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天田
「差別化戦略」は、私が先生に出会った頃ですね。
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藤屋
今は法人化もしましたし、肩書きもあまり必要としなくなったので、「藤屋式ニッチ戦略塾主宰」に落ち着いています。
ひとり起業において、肩書きは最大の差別化要素。だからこそ、とことんこだわり、状況や成長に応じて使い分けることが重要

■「これだけはやらない」というルールを決める

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天田
ありがとうございます。それにしても、ほんとうに物持ちがいいんですね! なにか起業した頃に心がけていたことはありましたか?
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藤屋
起業した時に自分でルールを決めました。中小企業診断士ですから商工会議所や役所といった公的機関からのオファーや先輩資格者のお手伝いがあるんです。当初はそれで食いつないでいたのですが、ある時はっきりと決めました。
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天田
どのように?
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藤屋
先輩の下請けはしない。商店街のサポートはやらないと決めました。
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天田
思い切った決断ですね。
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藤屋
先輩診断士のお手伝いをいくらしたところで、自分のお客様にはならないと気づいたのです。「これは自分のやる仕事ではない。仕事は自分で見つけるものだ」と思いました。
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天田
ずいぶん見切りが早いんですね…。
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藤屋
商店街のサポートの多くは行政からの補助金が使われていますから、大半は予算消化型です。会合の集まりは悪いし、無責任な商店主ばかり。何かを決めても実行しない。こういう人たちを相手にしていてはストレスがたまるばかりだということで決断しました。
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天田
すばらしい。
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藤屋
戦略とは何をやるかを決めること。そして「何をやらないか」を決めることが重要です。最初は売上がほしいから何でもやりたくなりますが、やらないことを決めるとやるべきことで稼がざるをえなくなります。
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天田
私もその部分はみっちりとご指導いただきました。おかげで、いくつもの事業を整理することができました。
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藤屋
天田さんはいろいろやりすぎでしたね(笑)。
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天田
お恥ずかしいかぎりです。たしか、ドラッカーの言葉にも「優先順位と劣後順位」の話が出てきますよね。「やらないことを決めることが重要である」と。
『ドラッカー理論で成功する「ひとり起業」の強化書』。ドラッカーのニッチ戦略をベースとした「藤屋式ニッチ戦略」の入門書。競争しないで賢く稼ぐための様々な考え方や先輩事例が1冊に凝縮されている

■ブランドは徹底と継続から生まれる

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天田
24年前のことをまるで昨日のことのように思い出していただき恐縮です。

ところで、今現在のことは、起業当時どれくらいイメージできていましたか?
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藤屋
ほとんどイメージはできなかったですね。未来なんてどんどん変わっていいんです。やりながら変わっていけばいい
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天田
環境に合わせる。
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藤屋
そうです。ただ、私はブランドが欲しかった。国家資格である中小企業診断士と社会保険労務士を取得したけれど、それでもなにか満たされないので起業して3年目に社会人大学院に通いました。そこで修士論文に取り上げたテーマが「ドラッカー」だったのです。
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天田
なにか運命のようなものを感じます。
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藤屋
その頃はひたすらドラッカーを繰り返し読んでいました。100回くらい読んだ頃でしょうか。ある人に伝えたら「ドラッカーを100回読んだ人なんていないから、それは本が書けるよ」と教えてくれたのです。
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天田
あの分厚いドラッカーを100回! それはすごい。
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藤屋
これまで勉強の道具だったドラッカーが、自分の商品になる。ブランドになると気づいた瞬間です。そして、これはドラッカーの本にも書いてあるのですが、「ブームはかならず来る」という言葉に勇気づけられました。
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天田
まさに、ラグビーのワールドカップのようですね。開催の10年前には日本で開催することは決まっていましたから、それを見越して準備することはできたはずです。
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藤屋
私も「ドラッカーのブームが来るとすればなんだろう?」と考えたときに、やや不謹慎ではあるものの思い浮かんだのが「ドラッカーが亡くなったとき」だろうと。

そこで、ドラッカーをテーマに本を書こうと決意しましたが、その時は自分の能力が足りずブームに乗ることはできませんでした。
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天田
そして、「ドラッカー生誕100年」(2009年)を目指されたのですね。
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藤屋
そうです。こうして発売されたのが2冊目の著書『図解で学ぶドラッカー入門』(日本能率協会マネジメントセンター)でした。この本は2009年の5月に発売され、その年の暮れには2万部くらい売れていたところにあの『もしドラ(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのマネジメントを読んだら)』岩崎夏海著/ダイヤモンド社)が発売され、あっという間に一大ドラッカーブームとなったのです。
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天田
たしかにすごいブームでしたね。『もしドラ』は累計300万部を突破し、ドラッカーの『マネジメント』は2009年以降だけで70万部も売れたそうです。
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藤屋
まさに帆を上げていたところに追い風が来たわけです。翌2010年に私の本も7万部まで伸び、それで一気にブランディングができました。
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天田
見事にブームを捉えることができたのですね。
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藤屋
みなさんも何かでブランディングしようと思ったら、次のブームを探すことからはじめてみてください。それを見つけたら徹底的にやり抜く。ずっと売り続ける。そうするとたくさんの人は無理かもしれませんが、特定の人は支持してくれます。
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天田
私も「アントレ」の編集者を18年、ニッチ戦略を7年学んだことで本を書くことができました。結果論ではありますが、どちらも長く続けてよかったと思います。
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藤屋
レディーガガという歌手がいます。彼女はとてもファンを大切にする歌手として有名ですが、「たったひとりのファンのために歌うようにしている」っていうんですね。

ファンサービスの徹底ぶりも有名で、ファンとの写真撮影にも気軽に応じたりするなどして、自分の世界観を築き上げています。

それによって、また新たなファンが生まれるという好循環を生み出す。この考え方や行動は、ビジネスの世界でも充分応用できるはずです。
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天田
たしかにそうかもしれませんね。目の前のひとりを満足させることの積み重ねの先に、世界があるんですね。

(つづく)

バックナンバーはこちら
【第1回】ドラッカーは起業家をどのように捉えていたのか?
つづきはこちら
【第3回】予期せぬ成功・失敗を受け止めよ

【監修者】
藤屋 伸二 Shinji Fujiya
藤屋式ニッチ戦略塾 主宰
藤屋ニッチ戦略研究所株式会社 代表取締役
ドラッカーの著書を250回以上読み込んで独自のコンサルティング手法を編み出し、300社以上の業績伸長やV字回復を支援。現在は「生態的ニッチ戦略」を継続的に勉強するための会員制経営セミナーの開催やFC展開をはじめ講師、執筆活動などに注力している。著書『図解で学ぶドラッカー入門』(日本能率協会マネジメントセンター)、『ドラッカーに学ぶニッチ戦略の教科書』(ダイレクト出版)をはじめ多数。著書・監修書の累計発行部数は231万部(電子版・海外版を含む)。 

【著者】
天田 幸宏 Yukihiro Amada
独自化戦略コンサルタント/ニッチ戦略士
コンセプトワークス株式会社 代表取締役
1973年生まれ。リクルート(現アントレ)発行の起業支援情報誌『アントレ』の編集者として、18年間でのべ3000人以上の起業家および予備軍を見てきた。個人的にも起業支援に取り組むなかで、起業家の書籍出版をサポート。これまで70人以上をプロデュースした実績をもつ。2012年より本書の監修者である藤屋伸二氏に師事し、ドラッカー理論をベースとした「ニッチ戦略」を学ぶ。2017年より藤屋氏が主宰するドラッカー理論をもとにした「藤屋式ニッチ戦略塾」は全国6か所で展開されるうちの1つ銀座塾を担当。経営者や個人事業主、起業家予備軍を対象に事業推進、目標達成のためのコンサルティングや研修、パーソナルセッションを行う。

ドラッカー理論で成功する「ひとり起業」の強化書

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